バリー・タックウェル

ゼレンカ/2つのホルンのための5つのカプリッチョ
CD(BRILLIANT 93785)5枚組

ゼレンカ/管弦楽作品&トリオ・ソナタ集
 CD1
 1.2つのホルン、2つのオーボエ、ファゴット
  弦楽と通奏低音のためのカプリッチョ第1番ニ長調
 2.2つのホルン、2つのオーボエ、ファゴット
  弦楽と通奏低音のためのカプリッチョ第2番ト長調
 3.2つのホルン、2つのオーボエ、ファゴット
  弦楽と通奏低音のためのカプリッチョ第3番ヘ長調
 CD2
 4.2つのホルン、2つのオーボエ、ファゴット
  弦楽と通奏低音のためのカプリッチョ第4番イ長調
 5.2つのホルン、2つのオーボエ、ファゴット
  弦楽と通奏低音のためのカプリッチョ第5番ト長調
 6.8声の協奏曲ト長調
 CD3
 7.8声のシンフォニア イ短調
 8.7声のヒポコンドリア イ長調
 9.7声の序曲ヘ長調
 CD4
10.トリオ・ソナタ第1番ヘ長調
   〜2つのオーボエ、ファゴットと通奏低音
11.トリオ・ソナタ第2番ト短調
   〜2つのオーボエ、ファゴットと通奏低音
12.トリオ・ソナタ第3番変ロ長調
   〜ヴァイオリン、オーボエ、ファゴットと通奏低音
 CD5
13.トリオ・ソナタ第4番ト短調
   〜2つのオーボエ、ファゴットと通奏低音
14.トリオ・ソナタ第5番ヘ長調
   〜2つのオーボエ、ファゴットと通奏低音
15.トリオ・ソナタ第6番ハ短調
   〜2つのオーボエ、ファゴットと通奏低音

   ハインツ・ホリガー(オーボエ)(1〜15)
   ハンス・エルホースト(オーボエ)(1〜5&7〜15)
   モーリス・ブルグ(オーボエ)(10、11、13〜15)
   バリー・タックウェル(ホルン)(1〜5)
   ロバート・ラウチ(ホルン)(1〜5)
   サシュコ・ガブリロフ(ヴァイオリン)(12)
   クラウス・トゥーネマン(ファゴット)(10〜15)
   ルチオ・ブッカレラ(コントラバス)(10〜15)
   クリスティアーヌ・ジャコテ(チェンバロ)(1〜15)
アレキサンダー・ファン・ウィンクープ(ヴァイオリン&指揮)
   カメラータ・ベルン(1〜9)
    録音 1977年9月(1〜9)
        1972年8月(10〜15)

  ヤン・ディスマス・ゼレンカ(1679〜1745)は18世紀ボヘミアの作曲家です。バロック時代の音楽をこの5枚で十分堪能できるでしょう。
  ゼレンカは2つのホルン、2つのオーボエ、ファゴット、弦楽と通奏低音のためのカプリッチョを5曲作曲しました。この中ではホルンの活躍が顕著な3番や5番は比較的よく演奏され、録音もありますが、全5曲の録音はこのカメラータ・ベルンが最初でした。ソリストにはオーボエのハインツ・ホリガーやホルンのバリー・タックウェルが起用され名盤の誉れ高い録音です。
  カプリッチョ第1番ニ長調はホルンの出番が少なくて、第1楽章では中間部にハイトーンの主題が聞かれます。第3楽章ではホルンの主題が冒頭から入ります。ここはタックウェルのホルンが活躍します。かなりのハイトーンがあります。第5楽章にもホルンが入ります。ここでもハイトーンの主題が歌われます。
  カプリッチョ第2番ト長調は第1楽章にきれいなホルン・ソロ、そしてデュオが歌われます。タックウェルのきれいなハイトーンが素晴らしい。第2楽章にもホルンが途中から入ります。第3楽章:ガヴォットでは2本のハイトーンのホルンが、第4楽章:ロンドーでも大活躍です。第5楽章も同様です。
  カプリッチョ第3番ヘ長調は冒頭から低音ホルンが響いてホルンらしい音楽が流れます。2本のホルンとオーボエが良い響きを作っています。またホルンの和音が大変きれいです。クラリーノが多い1番、2番とは違って中低音を使うこの曲は完成度の高さは抜群です。第2楽章は弦楽とオーボエのみ。第3楽章にはホルンの主題が入ります。ここでもハイトーンが使われますがメロディの美しさが聞き所。第4楽章:メヌエットは2本のホルンの活躍が素晴らしく、トリオでは抜けますがメヌエット2では中音域の見事な和音、メヌエット3でのホルンの歌は絶品です。
  カプリッチョ第4番イ長調は7つの楽章で構成されています。第1楽章は勢いのあるホルンの主題が響きます。イ長調ならではの超ハイトーンがあります。ディスカントホルンでもきついでしょう。第2楽章は弦楽とオーボエのみ、第3楽章:アリアはアリア2のアンダンテにはきれいなホルン・ソロが入ります。第4楽章は弦楽のみ、第5楽章は弦楽とオーボエのみ、第6楽章は2本のオーボエとファゴットのトリオ・ソナタで、これは美しさの極みです。第7楽章になって2本のホルンが入ります。ハイトーンの和音がきれいです。
  カプリッチョ第5番ト長調は5つの楽章によります。第1楽章のホルンは3度の和音の主題がきれいに響くところが聞き所でしょう。オーボエも同様です。この楽章は他の作品と比べてもその完成度は高いです。第2楽章:メヌエットはホルンが楽しそうです。第3楽章はオーボエ、ファゴットと弦楽、第4楽章はプレストの速いテンポでホルンが活気のある演奏をします。第5楽章:ヴィラネラはホルンのハイトーンがきれいです。5番は聞いて飽きがこないでしょう。
  8声の協奏曲ト長調はオーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロと弦楽と通奏低音のための作品で3つの楽章からなる協奏交響曲ともいえる作品です。ファゴットにもソロが与えられていますので、ここも聞き所です。3つの楽章の完成度の高さは抜群で、ゼレンカの作品の中でも白眉といえましょう。
  8声のシンフォニア イ短調は2本のオーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロと弦楽と通奏低音のための作品で5つの楽章で構成されています。アルビノーニのオーボエ協奏曲を聴いているかのような部分がありますので、その美しさはいうまでもないでしょう。
  7声のヒポコンドリアは2本のオーボエ、ファゴット、弦楽と通奏低音のための作品で単一楽章です。序奏(アダージョ)/アレグロ/レンテメントと続きます。弦楽にオーボエが溶け込んだような響きになっています。
  7声の序曲ヘ長調も2本のオーボエ、ファゴット、弦楽と通奏低音のための作品で、5つの楽章からなる組曲です。バッハ、テレマン、ヘンデルの作品同様この時代に流行した組曲です。第2楽章:アリアはやや速めのテンポで弦楽が歌います。第4楽章:シチリアーノは美しいメロディが流れます。
  6つのトリオ・ソナタは1972年に録音されていました。スイスのホリガーとフランスのモーリス・ブルグのオーボエ、ドイツのクラウス・トゥーネマンのファゴットとクリスティアーヌ・ジャコテのチェンバロ(クラヴサン)による演奏で、通奏低音にチェロではなくブッカレラのコントラバスを起用したものです。
トリオ・ソナタは1番と2番が5つの楽章、3番から6番までは4つの楽章で構成されています。また第3番だけがオーボエ、ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音となっていて、この3番でサシュコ・ガブリロフがヴァイオリンを弾いています。いずれの曲もファゴットのパートは複雑に動くところが聞きものです。またホリガーの名演は比類なきものでしょう。


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