サラ・ウィリス

ホルン・ディスカヴァリーズ(HORN DISCAVERIES)
CD(ALEXANDER 自主制作)
 
HORN DISCAVERIES
1.リチャード・ビッシル/「新世界の歌」
2.デイヴィッド・リニカー/ヴェルヴェット・ヴァルヴ
   6曲のロマンティック・トリオ編曲集
   1)メロディ(チャイコフスキー)
   2)ノクターン(チャイコフスキー)
   3)ユモレスク(ドヴォルザーク)
   4)ロマンス(ビゼー/真珠採りより)
   5)月の光(ドビュッシー)
   6)蜜バチ(フランソワ・シューベルト)
3.ヴァレンドルフ/ウィリザベサン・サラナーデ
   1)“P”デュエット
   2)ゴゾ・ファン・トゥッテ
   3)Xレンドリアン
   4)アギア・ガリーニ
   5)マイ・ヨーカー
4.メイソン・ベイツ/メインフレーム・トロピクス
   1)シリコン・ブルース
   2)マリン・スノー
   3)グレイハウンド

   サラ・ウィリス(ホルン)(1〜4)
   町田 琴和(ヴァイオリン)(2&4)
   フィリップ・マイヤース(ピアノ)(1、2&4)
   クラウス・ヴァレンドルフ(ホルン)(3)
   録音 2014年

 サラ・ウィリスとALEXANDERの企画による第2弾で「ホルン・ディスカヴァリーズ」のタイトルになっています。ベルリン・フィルのチェロ奏者リニカーのアレンジは注目です。
 リチャード・ビッシルはイギリスのホルン奏者で作曲家です。「Song of a New world(新世界の歌)」はアメリカ出身のサラ・ウィリスのために作曲したもので、下吹きホルンのために作曲した「Fat Belly blues」のように低音を多く使った作品です。低音のソロホルンで始まり、やがてピアノが入ります。クラシックとジャズが混在する面白い作品ですが演奏はかなりの難曲でしょう。サラ・ウィリスが吹きたかった音楽でしょうか。最後にオクターブ低い「ティル」のフレーズが演奏されて終わります。
 デイヴィッド・リニカーはベルリンフィルのチェロ奏者です。彼の編曲による6つの「ロマンティック・トリオ」は第1曲「メロディ」がヴァイオリンのための作品です。ホルンとヴァイオリンがメロディを吹き分けています。なんともロマンティックです。第2曲「ノクターン」はチェロのための小品です。チェリストのリニカーならではの選曲でしょう。ホルンで吹くと実に美しいもので、ヴァイオリンが支えるように愛らしく聞こえてきます。泣けるほどの名曲です。第3曲「ユモレスク」は誰もが知るドヴォルザークの小品でピアノ作品よりもヴァイオリンへの編曲が有名です。ここではヴァイオリンに主題をまかせていたり、ホルンでも吹いたり、この作品の魅力を教えてくれます。第4曲「ロマンス」はビゼーの歌劇「真珠採り」の最も有名な歌で第1幕で歌われる「耳に残る君の歌声」です。ホルンで歌うとなんとも哀愁的です。冒頭ではヴァイオリンとのユニゾーンです。第5曲「月の光」はドビュッシーの傑作で「ベルガマスク」組曲の中の1曲す。幻想的な音楽を吹くにはホルンもよく合います。ヴァイオリンとの絡みも美しい。最後の「蜜バチ」はフランソワ・シューベルトの作品でリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」のように激しく動き回る様子を書いたヴァイオリン作品です。ここではヴァイオリンとホルンが活発に動き回る様子を演奏しています。
 クラウス・ヴァレンドルフがサラ・ウィリスとデュエットするために書いた「willisabethan sarahnade(ウィリザベサン・サラナーデ)」はダジャレのタイトルですがセレナーデよろしく5つの小品で構成されています。第1曲「“P”デュエット」はホルンデュエットの楽しさを示す作品、第2曲「ゴゾ・ファン・トゥッテ」はモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」のダジャレですが、ここはメヌエットになっています。第3曲「Xlendrian」もインスパイアされた作品とのこと。第4曲「アギア・ガリーニ」とはクレタ島の小さな村のことだそうで南国らしい雰囲気を音楽にしたとか。第5曲「マイ・ヨーカー」は「ニューヨーカー」にひっかけたようにスイングするジャズっぽい作品です。
 メイソン・ベイツ(1977〜)はアメリカの作曲家です。「メインフレーム・トロピクス」は3つの曲で構成され、第1曲「シリコン・ブルース」はジャズピアニスト、レックス・ベルのために書かれた作品からの編曲のようです。第2曲「Marine snow(海雪)」は穏やかな作品で緩やかな楽章になります。第3曲「グレイハウンド」は題材を長距離バスにたとえたようで聞いているとトリオのほかにバチで叩く音がします。どうやらヴァレンドルフのようです。音楽旅行の終わりのようでした。
 そして最後のトラックには空白のあとに練習風景が収録されています。とても練習とはいえないリハーサルでうまくできた後の歓声が賑やかです。


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