バリー・タックウェル

モーツァルト/ホルン協奏曲全集(1990)
CD(Collins SCO 021)

モーツァルト/ホルン協奏曲全集
1.ホルン協奏曲第1番ニ長調K412&514
2.ホルン協奏曲第2番変ホ長調K417
3.ホルン協奏曲第3番変ホ長調K447
4.ホルン協奏曲第4番変ホ長調K495
5.ホルン協奏曲第0番変長調K370b&K371
6.フラグメント ホ長調K494a(98a)

  バリー・タックウェル(ホルン&指揮)
   フィルハーモニア管弦楽団
  録音 1990年7月

 このアルバムはタックウェル4度目のモーツァルト全集録音でした。指揮しながらの演奏です。曲数は1983年と同じですが、並べ方が面白く、ホルン協奏曲第1番ではK514のロンドを2曲続けて(タックウェル編とジェスマイヤー編)収録して3楽章にしています。そしてK370bとK371を2曲並べてホルン協奏曲第0番としたのは確かにそういう予定で書かれたと想像できますので、いいかもしれません。

 ホルン協奏曲第1番を聞くとタックウェルのモーツァルトの楽しさが伝わってきそうです。レガートのきれいな滑らかなホルンです。ロンドが2つ聴かれるのも面白いです。第2楽章はタックウェル編曲のK514でカデンツァが入ります。第3楽章はジェスマイアー編曲のロンドです。こちらはカデンツァはありません。とても滑らかなホルンです。 
 ホルン協奏曲第2番は演奏スタイルが変わっていないようにも思いますが、83年の録音同様指揮もしていますので指揮棒を振るかのようにソロを微妙に速く吹いているところもあります。音をスパッと切るのも緊張感を高めてくれます。第2楽章のアンダンテは滑らかなホルン演奏です。第3楽章のロンドは滑らかな演奏です。トリルのあとに短いカデンツァを入れています。これは素晴らしい演奏です。
 ホルン協奏曲第3番はタックウェルのまろやかなホルンが最も合う曲でしょう。ここでもきれいなレガートで流麗な演奏を聞かせてくれます。カデンツァは1983年の録音と同じですが貫禄のある演奏でした。第2楽章のロマンツェはレガートのきれいな滑らかなホルン演奏です。タックウェルらしいきれいな演奏です。第3楽章のアレグロはレガートのきれいなホルンの演奏です。見事な演奏です。
 ホルン協奏曲第4番もレガートがきれいな演奏です。指揮しながらのホルンは大変でしょうが、よいアンサンブルです。カデンツァは短くて1971年のカデンツァをさらに短くしたものですが、見事な演奏です。第2楽章のロマンツェはきれいな演奏です。オーケストラも良い響きです。第3楽章:ロンドの華麗な演奏はまた楽しいものです。なお、この録音ではじめてフレーズの繰り返しをしています。コーダ前にカデンツァが入ります。見事な演奏です。
 ホルン協奏曲第0番の第1楽章K370bはタックウェルがスケッチを集めて初めて録音した作品です。1983年に次いで2度目の録音でした。編曲もなじみ深いタックウェルが施したものです。完全に彼の音楽になっています。カデンツァは短いですが見事な演奏です。第2楽章のロンドK371はタックウェルの編曲で3度目の録音です。カデンツァはハイトーンから低音まで使う見事な演奏です。この演奏も楽しいものです。
 フラグメント ホ長調は4度目の録音です。未完成の作品ですから途中からホルンだけの演奏になるのは同じです。
 このモーツァルトはタックウェル円熟期の演奏と申しましょうか、落ち着いた堂々とした演奏です。さすがです。タックウェルのモーツァルトは演奏のお手本でしょう。


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