ルイ=フィリップ・マルソレ

ヒンデミット/ホルン作品集/ホルン協奏曲、他(2020)
CD(ATMA classique ACD2 2822)

ヒンデミット/ホルン作品集
1.ホルンとピアノのためのソナタ ヘ調
2.アルトホルンとピアノのためのソナタ変ホ調
3.ホルン協奏曲(シモン・ブルジェ編、室内楽版)
4.4本のホルンのためのソナタ
5.木管五重奏のための小室内音楽 0p.24-2

 ルイ=フィリップ・マルソレ(ホルン)(1〜5)
 シモン・ブルジェ(ホルン)(4)
 ルイ=ピエール・ベルジュロン(ホルン)(4)
 グザヴィエ・フォルタン(ホルン)(4)
 ペンタドル(木管五重奏団)(3&5)
 デイヴィッド・ジャルベール(ピアノ)(1〜3)
 録音 2020年9月 

 カナダのホルン奏者ルイ=フィリップ・マルソレによるヒンデミットの作品集です。
 ホルンとピアノのためのソナタは1939年の作品。難曲で、ヘ調とはいえ無調性のように半音をやたら使いますが、マルソレの演奏は実に素晴らしく、なめらかできれいな演奏です。第1楽章の激しいまでの勢いのある主題は絶品。第2楽章は穏やかな楽章です。ヒンデミットの緩徐楽章は魅力的です。流れるような主題がきれいです。第3楽章は冒頭から流れを断ち切るような音型があります。かと思えば今度は流れるような主題がきて、それをまた断ち切るという戦前のヒンデミットの気持ちが出ているような作品です。マルソレの演奏は実に素晴らしいものです。ホルンを十分に鳴らしてくれます。
 アルトホルンとピアノのためのソナタは1943年の作品。もともとアルトホルンのために書かれていますが、ここではフレンチホルンで吹いています。第1楽章は穏やかな雰囲気の主題でいやされます。第2楽章の踊るようなリズムとメロディは印象的です。マルソレのホルンは滑らかです。第3楽章は朗々と歌うホルンの美しい響きが素晴らしいです。通常は第4楽章の前に「ポストホルン」と題した演奏者の対話を読むのですが、この録音では入りません。第4楽章はピアノのきらびやかな響きで始まります。ホルンの流麗なメロディも素晴らしいです。
 ホルン協奏曲はシモン・ブルジェの編曲による室内楽版による演奏です。この作品は1949年にデニス・ブレインのために書かれました。作品は3つの楽章で構成されています。第1楽章はモデラートの速さによります。前奏のあとに明るく流麗な主題が演奏されます。短い楽章ですが、素晴らしい演奏です。マルソレのホルンが良い響きです。第2楽章は「速いテンポで」演奏するハイテンポで軽快な楽章です。マルソレのホルンは素晴らしいです。第3楽章は「大変遅いテンポで」演奏します。室内楽版は若干物足りない響きですが、ホルンは良い響きを出しています。中間部ではピアノが入って厚い響きを出しています。後半のホルンは雄大な響きで素晴らしい演奏です。
 4本のホルンのためのソナタは1952年の作品。ホルン・アンサンブルの定番となっています。第1楽章の「フガート」は素晴らしいアンサンブルで良い響きを出しています。第2楽章の「生き生きと」も素晴らしいアンサンブルになっています。第3楽章は変奏曲です。主題のあとにホルンの掛け合いが始まります。ホルン・アンサンブルの素晴らしさがあります。ミュートのホルンと開放のホルンが作る響きも素晴らしいです。
 木管五重奏のための小室内音楽は1922年の作品。ヒンデミット27歳の初期の作品です。5つの楽章で構成されています。第1楽章では木管の美しい響きが印象的。第2楽章ではホルンとファゴットが作り出す和音と、それぞれがソロを歌うなど聴きごたえがあります。第3楽章「穏やかに」は良い響きです。ヒンデミット初期の作品には美しさが感じられます。第4楽章では速いフレーズと優雅なソロが交互に演奏されるのが面白いです。ホルンのソロもあります。第5楽章は速いテンポで良いアンサンブルが聴かれます。名演です。


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