ラドヴァン・ヴラトコヴィチ

シューベルト/八重奏曲ヘ長調(1987年9月)
CD(TELDEC CLASSICS 8573-87803-2)

1.シューベルト/八重奏曲ヘ長調Op166、D803
   〜2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
    コントラバス、クラリネット、ホルンと
    ファゴットのための
2.シューベルト/弦楽五重奏曲ハ長調D956

  ベルリン・ゾリステン(1)
  ベルント・ゲラーマン(ヴァイオリン)
  ベルンハルト・ハルトーク(ヴァイオリン)
  ウォルフラム・クリスト(ヴィオラ)
  イェルク・バウマン(チェロ)
  クラウス・シュトール(コントラバス)
  カール・ライスター(クラリネット)
  ミラン・トゥルコヴィチ(ファゴット)
  ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(ホルン)
  ブランディス四重奏団(2)
  トーマス・ブランディス(ヴァイオリン)
  ペーター・ブレム(ヴァイオリン)
  ウィルフリート・シュトーレ(ヴィオラ)
  ヴォルフガング・ベッチャー(チェロ)〕
  イェルク・バウマン(チェロ)(2)
  録音1987年9月(1)
     1979年(2)

 ベルリンのトッププレイヤーが揃うベルリン・ゾリステンよるシューベルトの八重奏曲とブランディス四重奏団による弦楽五重奏曲です。
 シューベルトの八重奏曲は演奏に1時間近くかかるる大曲で室内アンサンブルのための交響曲といえます。1824年に書かれており「未完成」と「ザ・グレート」の間になります。シューベルトはホルンを大切にした曲が多いのですが、この曲にも重要なメロディーを吹かせています。第1楽章:前奏のアダージョから素晴らしい響きです。続くアレグロでは整然としたアンサンブルが聞かれます。ゲラーマンのヴァイオリンとライスターのクラリネットが大変良い響きで演奏しています。続くヴラトコヴィチのホルンも滑らかな演奏で素晴らしい響きです。この楽章では同じ音型が楽器を変えてなんども繰り返されます。再現部はファゴットに始まって主題が各楽器に受け継がれながらホルンのソロが高らかに歌われて終わります。第2楽章:アダージョはクラリネットで始まる穏やかな雰囲気がきれいです。ここはライスターの豊かな表現力が聞きものです。中間部ではホルンソロがきれいに歌われます。ヴァイオリンとの対話が大変きれいです。心が洗われるようなアダージョです。コーダのコントラバスのピツィカートは大変よく響きます。
 第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェは快活なスケルツォです。勢いのある演奏はまさに小さなオーケストラです。ライスターのクラリネットが大変素晴らしいです。ヴラトコヴィチのホルンもまた良い響きです。第4楽章:アンダンテは主題と7つの変奏曲、シューベルトの歌劇「サラマンカの友人」から使われた主題に始まります。クラリネットとヴァイオリンが良い響きで演奏しています。第1変奏のファゴットとホルンの絡みもきれいです。ヴラトコヴィチの吹くホルンの第3変奏は朗々と歌っていて大変よい響きです。ヴァイオリンもきれいです。続くバウマンのチェロの第4変奏もまた聞きものです。管楽器の絡みも力のこもった演奏は圧巻です。
第5変奏はスピード感があり,熱気を感じます。第7変奏は速めのテンポで緊張感があります。変化に富んだ7つの変奏曲は名作といえましょう。
 第5楽章:メヌエットはこの曲の中でも最も美しいといえる楽章です。クラリネットの美しい主題が歌われ弦楽器、ホルンに受け継がれていきます。ホルンの明るい響きが素晴らしい。優雅な響きのメヌエットです。ファゴットの美しい響きもまたよいものです。第6楽章:アンダンテ・モルト〜アレグロはシューベルトの音楽の美しさがあります。劇的な前奏に続くアレグロは壮大なフィナーレでこの演奏は小さなベルリン・フィルの演奏を聞いているかのようです。絶賛したいです。
演奏時間62分37秒。
  シューベルトの弦楽五重奏曲はヴィオラが2本ではなくチェロが2本です。低音の厚みが増してきます。4つの楽章で構成されています。第1楽章冒頭から何とも言えない哀愁的な歌が流れてきます。シューベルトの作品らしい美しさがあります。弦楽四重奏の「死と乙女」と双璧ではないでしょうか。第2楽章:アダージョは弦楽の美しさとピツィカートの響きの良さがあります。穏やかな前半と厚い響きの後半があります。第3楽章:スケルツォは弦楽の厚み、ユニゾーンの素晴らしさがあります。トリオはまるでアダージョのようです。第4楽章:アレグレットは舞曲のような楽しい主題で始まります。そしてシューベルトの音楽の集大成のような壮大な音楽を奏でています。この作品は遺作ともいわれていて、没後に初演されています。
演奏時間54分34秒


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