T・ファン・デァ・ズヴァールト

シューベルト/八重奏曲ヘ長調
CD(harmonia mundi HMM 902263)

シューベルト/室内楽作品集
1.八重奏曲ヘ長調Op166、D803
  〜2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
   コントラバス、クラリネット、ホルンと
  ファゴットのための
2.5つのメヌエットと6つのトリオD89より
   第3番メヌエット&第5番メヌエット
    (ストランスノイによる八重奏版)

 イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)
 アンネ・カタリーナ・シュライバー(ヴァイオリン)
 ダヌシャ・ヴァスキエヴィチ(ヴィオラ)
 クリスティン・フォン・デア・ゴルツ(チェロ)
 ジェイムス・マンロ(コントラバス)
 ロレンツォ・コッポラ(クラリネット)
 トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールト
          (ナチュラルホルン)
 ハヴィエル・ザフラ(ファゴット)
 録音 2017年7月5〜9日
 ベルリン/テルデックス・スタジオ

 フライブルク・バロック・オーケストラの弦楽器奏者を中心とした古楽器によるシューベルトの演奏です。シューベルトの八重奏曲は演奏に1時間もかかる大曲で室内アンサンブルのための交響曲といえます。1824年に書かれており「未完成」と「ザ・グレート」の間になります。シューベルトはホルンを大切にした曲が多いのですが、この曲にも重要なメロディーを吹かせています。
 第1楽章は前奏のアダージョからよいアンサンブが聞かれます。続くアレグロでは19世紀の管楽器の響きが独特です。甘い響きのクラリネット、太い音色のナチュラルホルンが響きます。ガット弦の弦楽器の響きもまた味があります。この楽章では同じ音型が楽器を変えてなんども繰り返されます。コーダはファゴットに始まって主題が各楽器に受け継がれながらホルンのソロで終わります。ズヴァールトのナチュラルホルンが大きく響きます。第2楽章:アダージョはクラリネットで始まる穏やかな雰囲気がきれいです。古楽器は華やかな響きではありませんが抒情的に聞こえます。イザベルのヴァイオリンとの対話がきれいです。中間部では整然としたアンサンブルが素晴らしい。ホルンとファゴットの音色が似ていますので和音が大変きれいです。コントラバスのピツィカートがよく響きます。
 第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェは快活なスケルツォです。厚みのある響きが大変きれいです。トリオのファゴットが印象的です。第4楽章:アンダンテは主題と7つの変奏曲、「ロザムンデ」の間奏曲を思わせるような主題に始まります。クラリネットとヴァイオリンの変奏がよい響きです。クラリネット、ファゴットとホルンの変奏ではホルンが2本のように聞こえています。ホルンの変奏はナチュラルホルンの響きがきれいです。ズヴァールトの腕の見せ所です。続くチェロの変奏もきれいです。変化に富んだ7つの変奏曲は後半が聴きものです。
 第5楽章:メヌエットはこの曲の中でも最も美しいといえる楽章です。クラリネットの美しい主題が流麗に歌われ弦楽器、ホルンに受け継がれていきます。クラリネット、ファゴット、弦楽器のユニゾーンの美しい響きもあって、優雅なメヌエットです。第6楽章:アンダンテ・モルト〜アレグロは劇的な前奏が印象的です。続くアレグロはオーケストラのような素晴らしいアンサンブルでまとめています。コーダの弦楽器の響きに圧倒されます。驚きの名演。(演奏時間60分30秒)
 5つのメヌエットと6つのトリオは演奏機会が少ない弦楽四重奏作品。この録音のために、2つのメヌエット(3番と5番)を八重奏版に編曲して演奏しています。古楽器によるメヌエットは19世紀の音楽そのものです。第3番ではファゴットとホルンの和音が大変きれいです。第5番では弦楽の響きが素晴らしいです。


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