フィリップ・マイヤーズ

フィリップ・レイミー/ホルン作品集
CD(AFFETTO AF1704)

フィリップ・レイミー/ホルン作品集
1.ヴァイオリン、ホルンとピアノのための
    トリオ・コンチェルタント(1993)
2.ホルンとピアノのためのエレジー(1995)
3.独奏ホルンのためのガーゴイル(1995)
   1)神経質な
   2)ロマンティック
   3)戯れる
   4)悲しげな
   5)耳ざわりな
   6)意地の悪い
   7)眠くなるような
   8)勝利を得た
4.ヴァイオリンとホルンのための2つのデュオ
5.2つのホルンのための対話(1997)
6.2つのホルンとピアノのためのソナタ・バラード

 フィリップ・マイヤーズ(ホルン)(1、2、5&6)
 ハワード・ウォール(ホルン)(3〜6)
 エルミラ・ダルヴァロヴァ(ヴァイオリン)(1&4)
 ヴァージニア・ペリー・ラム(ピアノ)(1、2&6)
  録音 1995年11月6日ライヴ(1)
      1996年6月7日(2)
      2017年2月10日(3)
      2017年1月12日(4) 
      1998年3月27日(5&6)
 
 フィリップ・レイミー(1939〜)はアメリカの作曲家、フィリップ・マイヤーズのためにいくつかの作品を書いています。いずれも世界初録音です。
 ヴァイオリン、ホルンとピアノのためのトリオ・コンチェルタントは1993年に書かれ翌年にマイヤーズによって初演されています。この録音は1995年のライヴ録音です。3つの楽章で構成され、第1楽章「モデラート」は穏やかに始まるのですが、すぐに強奏部分になって現代作品らしい響きになります。ホルンはハイトーンも使うきついものですがマイヤーズの演奏の見事なことに驚きます。第2楽章は「カデンツァ:アレグロ・モデラート」まずヴァイオリンのカデンツァがあり、次にホルンのカデンツァがあります。この無伴奏ホルンの演奏も迫力があります。やがてヴァイオリンとピアノが加わります。そして再びソロ・ホルンのカデンツァがきて、次いでヴァイオリンのみのカデンツァがきます。そしてトリオの強奏で終わります。第3楽章「アレグロ・グラチオーソ」は豪快な響きで始まります。この作品はマイヤーズのホルンで聴いてこそ味わいの深いものになると思います。
 ホルンとピアノのためのエレジーは1995年の作品。この作品はレイミーの兄の思い出に書かれたものです。初演はマイヤーズのホルンとレイミーのピアノでした。このエレジーはホルンが穏やかで深い響きをもって哀歌を歌うものです。素晴らしい演奏と作品です。
 独奏ホルンのためのガーゴイルは1995年にマイヤーズのために書かれました。ここではハワード・ウォールが演奏しています。「ガーゴイル」とは雨どいの出口に作られた怪物のことです。8つの小品の組曲です。副題を見ながら聞いていると面白いです。第1曲「神経質な」はアンダンテ、緊張感をもって歌うような小品。第2曲「ロマンティック」はレント、静かに始まりやがてホルンによる愛の歌が歌われます。第3曲「戯れる」はモデラート、動き回る様子も感じられます。第4曲「悲しげな」はアダージョでまるでエレジーのようです。第5曲「耳ざわりな」はモデラート・コン・モト、何度もグリッサンドでハイトーンが演奏されます。第6曲「意地の悪い」はモデラート、ミュートを使っているかと思いましたがゲシュトップと開放音の音色の違いを演奏した「意地悪な」小品です。第7曲「眠くなるような」はアダ−ジョ、ミュートを使って静かに歌う子守唄のようです。第8曲「勝利を得た」はアレグロ・マルカート、フィナーレを飾る誇りに満ちたようなホルンの歌が流れます。
 ヴァイオリンとホルンのための2つのデュオは2016年の作品。演奏者のダルヴァロヴァとハワード・ウォールのために書かれました。第1楽章「瞑想曲」はアダージョ、冒頭のヴァイオリンはブラームスのホルン・トリオが始まったかと思うよなフレーズです。このアダージョはブラームスのトリオからピアノを抜いたといってもいいような美しいデュオです。そしてホルンにミュートを付けたらまるでヴィオラのように響くところが絶妙です。第2楽章「バラード」はアダージョ・コン・モト、2つの楽章がともに緩徐楽章というのは珍しいですがこの2つの楽器を歌わせるのにはとても良いのかもしれません。ハワード・ウォールのホルンは表現力が豊かです。
 2つのホルンのための対話は1997年の作品。高音域にミュートを使って低音は開放で演奏する響きの良さを表現したものです。テンポはアダージョのように遅いです。
 2つのホルンとピアノのためのソナタ・バラードは1997年にマイヤーズとハワード・ウォールのために書かれました。2つの楽章で構成され、続けて演奏されます。第1楽章「アンダンテ、アレグロ・モデラート、アダージョ」はテンポの変化ミュートを時折使いながら見事なアンサンブルになっています。新しい響きが随所に聴かれます。第2楽章「アレグロ・ジョコーソ」は切れ目なく演奏されます。かなり賑やかな楽章です。ミュートを頻繁に使うこの作品は15分ほどの作品です。これからも注目されそうな作品です。


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