大野 総一郎

バッハ/ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調
CD(KING KICC-379/80)2枚組

バッハ/ブランデンブルク協奏曲全集
1.ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050
2.      〃        第4番ト長調BWV1049
3.      〃      第6番変ロ長調BWV1051
4.      〃       第2番ヘ長調BWV1047
5.      〃       第3番ト長調BWV1048
6.      〃       第1番ヘ長調BWV1046
 サイトウ・キネン・チェンバープレイヤーズ
  工藤 重典(フルート)(1)
   渡辺 實和子(ヴァイオリン・ソロ)(1)
     〃   (ヴァイオリン)(2&6)
   野平 一郎(チェンバロ)(1〜6)
   島田 真千子(ヴァイオリン)(1&4〜6)
   今井 信子(ヴィオラ)(1、2&4〜6)
     〃  (ヴィオラ・ダ・ブラッチョ)(3)
   北本 秀樹(チェロ)(1〜6)
   永島 義男(コントラバス)(1〜6)
  ワルター・ファン・ハウベ(リコーダー)(2&4)
   山岡 重治(リコーダー)(2)
   川崎 洋介(ヴァイオリン・ソロ)(2)
     〃  (ヴァイオリン)(6)
   斎藤 和久(ヴァイオリン)(2&6)
     〃  (ヴィオラ・ダ・ガンバ)(3)
   鈴木 康浩(ヴィオラ・ダ・ブラッチョ)(3)
     〃   (ヴィオラ)(5)
   福沢 宏 (ヴィオラ・ダ・ガンバ)(3)
   水野 信行(ホルン)(4)
   三宮 正満(オーボエ)(4&6)
   平崎 真弓(ヴァイオリン)(4&5)
   福原 眞幸(ヴァイオリン)(4)
   安芸 晶子(ヴァイオリン)(5)
   篠崎 友美(ヴィオラ)(5&6)
   オーレ・アカホシ(チェロ)(5)
    林 詩乃(チェロ)(5)
   尾崎 温子(オーボエ)(6)
   前橋ゆかり(オーボエ)(6)
   阿部  麿 (ホルン)(6)
   大野総一郎(ホルン)(6)  
   近衛 一 (ファゴット)(6)
   録音 2001年9月3〜5日
     松本/ザ・ハーモニーホール

 2001年のサイトウキネン・フェスティバルの時に録音さらたブランデンブルク協奏曲全曲です。指揮者なしの小編成のアンサンブルによる演奏は必要最低限の人数での演奏です。5番と6番は7名、4番は9名、2番は10名、3番は11名、1番だけは17名の演奏です。
  第5番はフルート、ヴァイオリンとチェンバロがソロ楽器になります。工藤重典のフルートはランパル直伝の美音でバッハを堪能させてくれます。渡辺實和子のヴァイオリンと野平一郎のチェンバロも素晴らしく、第1楽章後半では長いカデンツァがチェンバロだけで演奏されますが、この響きがなんともいえません。7名の演奏で伴奏がヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとコントラバスが各1名という少ない編成ですが、十分に楽しめる演奏になりました。
  第4番は2本のリコーダーが華やかに響きます。ヴァイオリンがソロ楽器に加わりますが、伴奏が弦楽四重奏とコントラバス、チェンバロだけで9名の演奏です。それだけにリコーダーの響きが大変よく聞こえてきます。第2楽章ではチェンバロのアルペッジョに続く2本のリコーダーが大変きれいです。
  第6番は風変わりな作品で、ヴィオラ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロ、コントラバスとチェンバロだけによるいわば中低音楽器だけによる演奏です。ここではヴィオラのパートをバッハの指定どおりヴィオラ・ダ・ブラッチョを弾いていますが、ヴィオラとの違いはわかりません。ガンバ(脚の)に対して腕でささえる楽器の総称ともいわれます。第1楽章はヴィオラとガンバが主役でシンコペーションの主題が交錯します。第2楽章はガンバが抜けてヴィオラとチェロが流麗な演奏をします。7名の演奏だけに音の厚みは足りませんが、アンサンブルの美しさは最高でしょう。第3楽章は全合奏でフーガのように追いかけてゆく主題が繰り返されています。
  第2番ではトランペットのパートをホルンで演奏しています。ヘ長調という調性はホルンで吹きやすいこともありますが、10名の編成でトランペットが吹くと飛びぬけて高い音が他の楽器の音を消してしまいますので、オクターブ低いホルンで吹くことは理にかなっています。水野のホルン・ソロは素晴らしく、ホルン協奏曲のようです。第2楽章はヴァイオリン・ソロとオーボエ、リコーダーのトリオ・ソナタが聞きものです。第3楽章はホルンの高音を使いますが、トランペットとは異なる美しさがあります。ホルンの超絶技巧が聞かれます。
  第3番は弦楽合奏とチェンバロだけの演奏で11名の編成で演奏していますので厚みのある響きが素晴らしい。第2楽章:アダージョではチェンバロのカデンツァが挿入されています。
  第1番は2本のホルン、3本のオーボエ、ファゴットとヴァイオリンがソロ楽器になります。管楽器の響きの大きさに合わせてヴァイオリンが6、ヴィオラが2、そしてチェロ、コントラバスが各1とチェンバロで演奏されています。第1楽章は2本のホルンが冒頭から鳴り響きます。3本のオーボエとファゴットもよく響きます。阿部と大野のホルンは完璧で実に楽しいです。第2楽章ではオーボエとファゴットとヴァイオリンのアンサンブルが見事です。第3楽章のアレグロでは2本のホルンが明るく響いています。ヴァイオリン・ソロも素晴らしい。第4楽章のメヌエットはやや速めのテンポで演奏しています。第1トリオではオーボエとファゴットの響きが聞きもの、中間部のポロネーズは丁寧に演奏していました。第2トリオのホルンはやや遅めのテンポで丁寧に演奏していますが、そのうまさは素晴らしいものです。
ザ・ロマンティック・ホルン
CD(Fioradimusica CHM1001CD)

ザ・ロマンティック・ホルン
1.F・シュトラウス/シューベルトの
       「あこがれのワルツ」による幻想曲Op2
2.サン=サーンス/ロマンス ヘ長調Op36
3.オスカー・フランツ/無言歌Op2
4.ライネッケ/ノットゥルノOp112
5.グリエール/ロマンスOp35−6
6.F・シュトラウス/主題と変奏Op13
7.   〃    /夜想曲Op7
8.リース/序奏とロンドOp113−2
  大野 総一郎(ホルン)
  ミツユ・マリコ(ピアノ)
  録音 1990年3月20&21日
      フランクフルト音楽院ホール

  ドイツのフランクフルトで録音されたこのアルバムは大野総一郎がすでに巨匠の域に達していることがわかる素晴らしい演奏ばかりです。フランツ・シュトラウスのホルン作品を3曲録音していますが、当時はまだほとんど知られていない曲ばかりです。夜想曲以外は珍しい録音でした。幻想曲の演奏が素晴らしいです。序奏と変奏は伴奏もよくてホルンがまたきれいです。夜想曲は実にロマンティックな演奏です。これに刺激されてか90年代に相次いで夜想曲が録音されています。
 サン=サーンスのロマンスはその演奏がほぼノン・ビヴラートできれいです。オスカー・フランツはフランツ・シュトラウスより21歳若いホルン奏者でした。無言歌はドイツでは愛奏曲のようです。ライネッケのノットゥルノはまだ一般に知られていない曲でした。これが初めての録音かもしれません。
 グリエールのロマンスは4つの小品の中の1曲でノイネッカーよりも2年前に録音していました。同じオーケストラのノイネッカーが録音したのは2年後でした。フェルディナンド・リースの序奏とロンドはこれもまた録音が少ない曲で、これもまた初めての録音かもしれません。演奏はなめらかでよどみのない見事な演奏です。愛聴盤になりそうです。


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