ヤスパー・デ・ワール

ブリテン/テノール、ホルンと弦楽のためのセレナード
SACD(CHANNEL CLASSICS CCS SA32213)

ブリテン/弦楽と声楽のための作品集
1.イリュミナシオンOp18
2.フランク・ブリッジの主題による変奏曲Op10
3.テノール、ホルンと弦楽のためのセレナードOp31
4.深紅の花弁は眠りに就く

 バーバラ・ハンニガン(ソプラノ)(1)
 ヤスパー・デ・ワール(ホルン)(3&4)
 ジェイムス・ギルクリスト(テノール)(3&4)
 カンディダ・トンプソン指揮
 アムステルダム・シンフォニエッタ
 録音 2010年10月25&26日(1)
     2011年10月14&15日(3&4)
     2012年4月17&18(2)

 ベンジャミン・ブリテン(1913〜1976)が生誕100年を迎えるのを記念して制作されたアルバムです。イギリスではなくオランダの団体による録音です。「イリュミナシオン」と「セレナード」はブリテンの残した弦楽と声楽のための作品の代表的な作品です。
 「イリュミナシオン」はバーバラ・ハンニガンのソプラノ歌唱の素晴らしさと弦楽アンサンブルの見事な演奏が名演を生んでいます。
「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」は「シンプル・シンフォニー」と共にブリテンの重要な弦楽作品です。このアムステルダム・シンフォニエッタの緻密で表情豊かな演奏はこの作品の隠れた魅力を前面に引き出した名演といえましょう。実に素晴らしい響きです。
 「セレナード」はホルンとテノールのために書かれた作品でイギリスの多くのホルン奏者が演奏しています。ヤスパー・デ・ワールはオランダのホルン奏者でコンセルトヘボウの首席ホルン奏者です。ホルンの響きは明るく絶妙なビヴラートをかけています。イギリスの演奏家の響きと比べればちょっと違いますがその透明感のある響きと明るさ、ギルクリストのテノールとの相性もよく「ノクターン」の演奏は完璧です。かつて聞いたセレナードのホルン演奏の中でも一際目立つもので軽いビヴラートがこれほど生きた演奏もないでしょう。冒頭の「プロローグ」は自然倍音だけで演奏しますがきれいな響きで絶妙なビヴラートは新たなセレナードといえましょう。「エレジー」は強奏でも音を割らずに演奏しています。「ジーグ」はギルクリストの熱唱が聴きものです。「讃歌」の演奏はホルンの鮮やかなタンギングが素晴らしく、加えて明るさがあります。
 「深紅の花弁は眠りに就く」はもともと「セレナード」の中の1曲でしたが楽譜が失われてしまい1986年に発見されるまで日の目を見なかったものです。穏やかな雰囲気の作品でヤスパー・デ・ワールの美しいホルンが弦楽と共に良い響きを作り出しています。


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