西條 貴人

ジャパン・ホルン・クァルテット/ホルン・シグナル
CD(MEISTER MUSIC MM−1067)

ハイドン:ホルン・シグナル
1.ハイドン〜マルチネット編/ 
   交響曲第31番「ホルン信号」〜1&3楽章
2.ボザ/4つのホルンの為の組曲
3.カステルヌオーヴォ=テデスコ/
    4つのホルンの為のコラールと変奏
4.ターナー/ホルン四重奏曲第2番「アメリカーナ」

  ジャパン・ホルン・クァルテット
   山岸 博(ホルン)(読響首席)
   一色 隆雄(ホルン)(NHK響)
   久永 重明(ホルン)(読響)
   西條 貴人(ホルン)(東京シティ・フィル(当時))
   岡田 全弘(パーカッション)(4)
    録音 1999年6月21&28日
         横浜・フィリア・ホール

 東京ホルン クワルテットを抜けた山岸が新たにメンバーを集めてできたジャパン・ホルン・クァルテットによるデビューCDでした。
 ハイドンのホルン・シグナルは原曲のニ長調をハ長調に移調しての編曲です。4つの楽章から第1楽章:アレグロと第3楽章:メヌエットが演奏されます。マルチネットの編曲で第1楽章ではトップのオクターブだけでなくフルートの上昇メロディーからヴァイオリンの細かいフレーズまで鮮やかな演奏です。乱れのない演奏は最初からホルンのための作品のように感じられます。第3楽章:メヌエットはレガートのうまさが素晴らしく、和音の美しいことこの上ないほどです。
  ウジェーヌ・ボザの「4つのホルンの為の組曲」は1952年の作品でベルリン・フィル・ホルン・カルテットが演奏会で取り上げてから度々演奏されるようになりました。6つの小品からなる組曲で第1曲「プレリュード」は夜明けを表現したような穏やかな曲でミュートも使われます。第2曲「狩」は自然倍音で演奏しており狩猟ホルンの音を再現していますので調子っぱずれの音が出ます。ミュートで遠近感を出しているところはいかにも「狩」のようです。第3曲「古い歌」はスコットランド民謡らしくたいへんきれいなメロディが流れます。第4曲「ダンス」はいかにも踊りたくなるようなテンポとメロディです。第5曲「コラール」は4本のホルンの和音が大変きれいな曲、第6曲「ファンファーレ」は静かに始まり最後にクライマックスを作ります。
 カステルヌオーヴォ=テデスコはイタリアの作曲家でギター作品が有名ですが多作家らしくホルンのために書いた「4つのホルンの為のコラールと変奏」は主題と7つの変奏曲から構成されています。コラールの主題を変奏していきますが緩急をつけて第1変奏、第2変奏と続きます。レガートがきれいな第3変奏「アリア」も聞き所でしょう。第4変奏の激しい動き、第5変奏は主題と伴奏ホルンにわかれて良い響き、第6変奏はミュートを使い独特の響きがあります。そして第7変奏「フーガ」では4本のホルンが縦横に活躍します。まさに名曲名演です。
 ターナーのホルン四重奏曲第2番「アメリカーナ」はアメリカン・ホルン・カルテットのケリー・ターナーが作曲したもので、ホルン吹きならではの構成です。第1楽章「西部」では開拓時代の元気な雰囲気があり、演奏は困難を極めそうです。第2楽章「戦争」は南北戦争を表現していますがむしろ穏やかに休息している風景を描いているようです。和音が美しいですが最後にドラムが入り進軍してくる状況と大砲の残響をホルンに息を吹き込んで表現するという離れ業が凄い。第3楽章「ホー・ダウン」はヒルビリー地方の踊りの音楽で速いテンポで細かいフレーズの連続です。名人芸を要求する難曲です。この演奏の素晴らしい事はいうまでもなく最後を飾るに相応しい逸品です。
 このアルバムはホルン・アンサンブルのバイブルとしてホルン吹きの学生さんには是非聴いていただきたいCDです。


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